そして迎えたTOT本番8日は、朝から雨…
「カミジョーメカ、BSさんのガレージ行ってレインタイヤに履き替えてきて」
「はい!」
キュ、キュ、カチャ、ドゥルルルル!」
「カミジョーメカ…」
「カミジョーメカ!」
「はい?」
「チミが今外そうとしているホイールの件でチョット話したい事があるんだけど…」
「今でなくてはだめですか、忙しいんですけど」
「いや、ややもすると今後ブリヂストンさんとのお付き合いもややこしくなるからできれば今その手を止めていただきたいのだが、どうだろう?」
「分かりましたよ、で、なんですか?」
「きっとチミは、今まさに外されようとしている僅か10インチのスクーターのホイールを持ってブリヂストンさんのガレージへ向かおうとしているね」
「そしてきっとチミは真剣な面持ちでこう言うのだろう」
「このホイールにレーシングレインタイヤを装着して欲しいと…」
「タイヤ交換で多忙を極めるガレージのスタッフさんにウチのジャンパーを着たチミがスクーターのタイヤ交換を頼みにブリジストンさんに行こうとしているのだ…」
カチャ
「だから!KAKERU君の
ホイールを外すの
今すぐやめぇぇぇい!!」
「だって、てんちょーがレインにするとおっしゃるから」
「チミの頭はカラッポか?」
「チミはウエット路面で絶大なグリップ力を発揮するレインタイヤに交換されたそのKAKERU君とやらで始動されたドライタイヤのままのCBにてんちょーが颯爽とまたがりコースインするや否やアズスーンアズ 1コーナーで…」
ツル!
カシャン!
チャチャチャチャチャ!
グシャ!
パフ!(エアバックが開いた音)
「となる覚悟をしてまでそのKAKERU君とやらのタイヤをレインにして欲しいと私が指示をしたと理解した訳かな、カミジョーくん」
「それと実はもう1つさっきから気になってるんだが…」
「何のことでしょ」
「なんか、付いたね…」
「カウルの事ですか」
「それ、大事なレーサー用のスペアだよね」
「なに、KAKERU君に付けちゃってるの?」
「2号のままですと骨格剥き出しの裸のロボットみたいでかっこ悪いと…」
「敵と戦うときに、ナメられんじゃないかと…」
「誰と戦おうとしてるのかはこの際置いておいて、そう、チミが思ったのか?」
「と、アニジャが言う物ですから」
「この度V3へと進化いたしました」
「あっ、そう、今V3ってなってんだ…アニジャを呼んでもらえるかな」
「なんすかぁ?」
「KAKERU君V3搭乗前にシンクロ率挙げるために精神統一してるんで忙しいんすけど…」
「ウチの大事なレーサーのカウルがあらぬ所に使用されているのでその件で」
「カッコいいじゃないすか、大事でしょビジュアル」
「高いんだよ、知ってる、そのカウル」
「何 惜しみなくそんなスターターに投じちゃってるわけ?」
「V3!っす!!」
「じゃそのぶいすりーに!」
「オマヘが結果出せねぇんだから、こういう所で勝負するしかねーだろ」
「お、おまへ、コウイウトコロデ?」
「もう随分、エフゼロセブンとして身を粉にして手伝ってきたけど、いつもいつも惨敗しやがって、もう飽き飽きなんだよ!」
「他のスタッフもそう思ってんだぞ!気づけよ、空気読めよボケ!」
「こんなんでも持ち込まなきゃ誰もウチのテントの前で
足止めねぇーだろよ!」
「レースクイーンもいねえし!!」
「ぼけ…?」
「やぶきさぁぁぁん、アニジャが酷いコト言うんだよぉぉぉぉ」
「やぶき…さ、ん なに、やってんの?」
「ホントは、アタイが操縦するはずだったのにさ、気に入らないねぇ」
「どうした、どうした?」
「彼女は、パイロット最終試験でアニジャに僅差で敗れその座を失ってからあの調子です」
「どうせKAKERU君V3にアタイは必要ないんだろ!もう寝るよ!」
「エフゼロセブンの皆さん今日何しにきてんの?戦力になんの?」
「モチベーションは相当下がってる様子ですな」
「こんなスタッフに囲まれて、オレ、ホントに今日レースやれるかな…」
「KAKERU君V3を最前列一番左側に並べることが出来ればエフゼロセブンもまた変わるんじゃないですか…」
「そんな遠くを見つめながらプレッシャー掛けんなよ…」
こうして予選15位、決勝8位というやっぱり中途半端な結果でレースを終えたてんちょー
と言う事は、今やその主役の座を欲しいがままとしたKAKERU君の開発は更なる加速を続け、アマゾン、アギト、ディケードとか、ドライブやらと進化を続け来年の5月はゴーストとなって登場することでしょう…
ゴーストって もはや幽霊だけどね…